鼠多門(2020年7月完工)

金沢城の歴史と藩政、そして前田家の私的空間に深く関わる特別な門「鼠多門(ねずみたもん)」が世紀を越えて復元されました。兼六・松浦・ほそ川特定建設工事共同企業体として石川県より事業を受注し、2020年7月に約140年ぶりに復元することができました。
藩主の正室や側室が住まう御殿「玉泉院丸」から加賀藩主の別邸である金谷御殿と呼ばれる金谷出丸(現尾山神社)へ通じる道の出入り口の門が「鼠多門」でした。一般の人が通れず、ごく限られた人たちのみが通った。私的で、かつ特別な道だったと言われています。

今回の復元工事では、古写真や絵図、文献等調査により判明した柱の位置等をもとに設計されたものを、歴史を敬い、時代と対話をすることで「かつてそこにあったはずの姿」を今この場所に蘇らせることができました。
門の部分は欅(けやき)で、樹齢100年を超すものも使用されています。門内部でには石川県産の能登ヒバ、杉が多く使用され、釘や金物を使わずに組み立てる在来工法で建てられており、現代の耐震基準も満たしています。
外壁は白漆喰塗、腰壁は海鼠壁(なまこかべ)が用いられています。海鼠壁の目地が黒漆喰で仕上げられていることが城内の他の門に見られない特徴です。黒漆喰により壁の色が全体的に鼠色に見えることがこの門の名称になったという説が有力です。




当工事は令和3年度優良建設工事として石川県知事より表彰していただきました。ほそ川建設として、金沢の重要な歴史的建造物の工事に携わることができたことをうれしく思います。
金沢城公園から鼠多門を通って尾山神社、そして長町武家屋敷界隈までの城下町巡りにて金沢の歴史をたのしんでみてはいかがでしょうか。